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Web巡回システムの導入方法|クローラーを活用した効率的なデータ収集とは?

Web上に点在する膨大な情報を、効率よく収集・活用したいと考えていませんか?
人手での情報収集には限界があり、精度やスピードに課題を感じる企業も少なくありません。そんな課題を解決するのが「Web巡回システム(クローラー)」です。

Web巡回システムを導入すれば、特定のサイトを自動で巡回し、必要な情報を素早く・正確に取得することが可能になります。
本記事では、Web巡回システムの仕組みから導入手順、活用例、運用時の注意点までをわかりやすく解説します。情報収集の自動化・効率化を図りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

Web巡回システムとは?

Web巡回システムとは、インターネット上にある無数のウェブページを自動的に巡回し、情報を収集する仕組みのことです。一般的には「クローラー」とも呼ばれており、検索エンジンや企業のデータ収集などで活用されています。この記事では「クローラー」と同義として「Web巡回システム」という言葉を用いて、導入のポイントや活用方法について解説していきます。

Web巡回システムの仕組み

Web巡回システムは、指定されたURLからHTMLやリンクをたどって次々とWebページを巡回し、必要な情報を収集するプログラムです。巡回の起点となるURL(シードURL)を設定すると、クローラーはそのページの中にあるリンクを解析し、新たなページへアクセスを繰り返します。こうして取得した情報は、検索インデックスやデータベースに格納され、検索や分析、監視などに活用されます。

この自動巡回の仕組みによって、人手では困難な大量データの取得や、定期的な情報の更新チェックが可能になるのです。企業や研究機関など、あらゆる場面でWeb巡回システムが重宝されている理由は、まさにこの効率性とスピードにあります。

Webスクレイピングとの違い

Web巡回システムとよく混同されがちなものに「Webスクレイピング」があります。両者は密接に関連していますが、明確な違いがあります。クローラーがWebページを巡回してURLやリンク構造を取得するのに対し、スクレイピングはそのページのHTML構造を解析し、特定の情報(例えば価格、商品名、ニュース記事の見出しなど)を抽出する作業にあたります。

つまり、クローラーは「どのページを見に行くかを判断する役割」、スクレイピングは「そのページから何を抜き出すかを決める役割」と言えるでしょう。両方を組み合わせることで、より精度の高いWebデータの収集が可能になります。

クローリングとスクレイピングの違いや、それぞれの使い分けについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
スクレイピングとクローリングの違いとは?仕組みや使い分けも紹介

Web巡回システムで実現できることとは

Web巡回システムで実現できることとは

Web巡回システムを活用することで、従来は人が手作業で行っていたWeb上の情報収集を効率化・自動化できます。ここでは、Web巡回システムを導入することで可能になる代表的な活用例を紹介します。

  • コンテンツの集約
  • 感情分析
  • 見込み客の獲得

それぞれの活用例を見ていきましょう。

コンテンツの集約

Web巡回システムを活用するWeb巡回システムを活用すると、複数のニュースサイトやブログ、製品情報ページなどから、特定のテーマに関連するコンテンツを自動で集約することができます。
例えば、ある業界の最新ニュースを一覧でまとめたい場合、クローラーを使えば各ニュースサイトから関連情報だけを取得し、日々の更新情報を自動で取得可能です。
これにより、情報の漏れを防ぎながら、効率的に最新動向を把握する環境を整えることができます。

感情分析

感情分析とは、人が書いた文章から「嬉しい」「怒っている」「悲しい」などの感情を読み取る技術のことです。例えば、SNSの投稿や商品レビューを分析して、その人がポジティブな気持ちで書いているのか、ネガティブな気持ちなのかを判定します。

Web巡回システムを使えば、こうした文章データをインターネット上から自動で集めることができ、感情分析に活用できます。例えば、ある商品の評判を知りたいときに、SNSや口コミサイトから関連投稿を収集し、「満足」「不満」「期待」といった感情を分類すれば、ユーザーのリアルな声を可視化できるでしょう。

これにより、企業はサービス改善のヒントを得たり、トレンドの変化をいち早く察知したりすることが可能になります。感情分析は、顧客の本音を読み解くための強力な手段です。

見込み客の獲得

特定の条件を満たす企業や個人を自動でリストアップすることも、Web巡回システムの活用方法のひとつです。
例えば、ある業種の企業の連絡先を自動取得し、営業リストを作成することで、見込み客へのアプローチがスムーズになります。
手作業で情報を探す時間が大幅に削減され、営業活動の効率化につながります。

Web巡回システムを開発するには?

Web巡回システムは、プログラミングによって自作することが可能です。自社の用途に応じて独自の巡回・取得ロジックを構築することで、必要なデータだけを効率よく収集できます。
開発の基本的な流れとしては、以下の3ステップが中核となります。

  1. HTTPリクエストの送信
    まずは、対象のWebサイトに対してHTTPリクエストを送信します。このリクエストによってHTMLなどのページデータを取得し、次のステップへ進みます。
  2. ページの解析
    取得したHTMLを構文解析し、DOM(ドキュメントオブジェクトモデル)ツリーを生成します。このDOM構造を使って、ページ内の要素やリンク、テキストなどの情報を抽出できるようになります。
  3. 解析ツリーの検索・情報の抽出
    構築した解析ツリーから、目的のデータ(例えばタイトル、価格、URLなど)を特定し、必要な情報を抽出します。このとき、XPathやCSSセレクタを用いて精度の高い情報取得を実現します。

これらの処理は、PythonやJavaScript、Javaなどのプログラミング言語を使って実装されるのが一般的です。
中でもPythonは、コードがシンプルで学習コストも低いため人気があり、「requests」や「BeautifulSoup」「Scrapy」といったライブラリを使えば、比較的簡単にクローラーを開発できます。

ただし、商用利用や大規模な巡回を行う場合には注意が必要です。対象となるWebサイトの利用規約や「robots.txt(ロボッツテキスト)」を事前に確認しましょう。「robots.txt」とは、Webサイトの運営者がクローラーに対して「このページは見に来ないでください」と指示するためのルールを記述したファイルです。多くのサイトは、このファイルを使って「どのページをクロールしても良いのか・ダメなのか」を指定しています。

このルールを無視してしまうと、意図しない迷惑行為となる可能性もあるため、Web巡回システムを開発・運用する際は、こうした配慮も欠かせません。

クローラーの開発・運用については以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。

定期収集に最適!Webクローラーの開発から運用までの全手順

Web巡回システム導入手順

Web巡回システムを効果的に導入するためには、事前の準備と明確な設計が重要です。ただシステムを構築するだけでは、思うような成果を得ることはできません。目的に合った仕様やツールを見極めながら、段階的に導入を進める必要があります。ここでは、導入の基本的なステップをご紹介します。

  • 要件定義
  • ツール選定
  • システム構築・設定
  • テスト運用
  • 本番運用・効果測定

これらの手順について詳しく見ていきましょう。

要件定義

まず最初に行うべきなのが要件定義です。
Web巡回システムの導入においては、「なぜ情報を収集するのか」「誰のために活用するのか」「どのようなデータを収集したいのか」を明確にすることが重要です。以下のような点を整理しておきましょう。

  • 目的:競合調査、価格モニタリング、リード獲得、情報分析など
  • ターゲットサイト:どのWebサイトからデータを取得するのか
  • 収集対象データ:商品名、価格、記事タイトル、投稿日など
  • 頻度と量:日次で取得するのか、1日あたり何件収集するのか

このフェーズを丁寧に進めることで、システム設計の方向性が定まり、開発やツール選定がスムーズに進行します。

ツール選定

ツールを選定します。自社で開発するか、既存のクローラー・スクレイピングツールを利用するかを検討しましょう。

  • 自社開発:柔軟なカスタマイズが可能で、特定の要件に最適化しやすい。一方で、開発コストや保守の負担が大きくなります。
  • 既存ツールの活用:Octoparse、Scrapy、ParseHubなどGUIやコードベースで操作できるツールが豊富。比較的短期間で導入できる利点があります。

自社開発の場合は、Pythonなどのプログラミング言語を使ってクローラーを構築します。ライブラリとしては、requests、BeautifulSoup、Scrapyなどがよく使われます。柔軟にカスタマイズできるのが強みですが、開発や保守のためにエンジニアのスキルやリソースが必要です。

一方、OctoparseやParseHubのような既存ツールを使えば、プログラミングの知識がなくても、画面操作だけでクローラーを作成できます。導入が手軽な反面、細かい処理には制限がある場合もあります。

いずれの方法でも、対象サイトの構造に対応できるか、出力形式(CSVやJSONなど)が適しているか、API連携が可能かといった点を事前に確認しておくことが重要です。

システム構築・設定

要件定義とツール選定が完了したら、いよいよシステム構築に入ります。

プログラミングで開発する場合は、あらかじめ決めたルールに従って、「どのサイトを見に行くか」「どの情報を取るか」「どう保存するか」といった流れをプログラムで作っていきます。
ここでは、Webサイトにアクセスして情報を読み取る処理や、集めた情報をきちんと整理して保存する仕組みが必要になります。

一方で、Octoparseのようなツールを使う場合は、画面上の操作で「どのページを見るか」「どの部分のデータを取り出すか」「いつ巡回するか」などを設定していくだけで使えるようになります。

どちらの方法でも、Webサイトの構造変化やアクセス制限を想定して、エラー処理や例外対応を盛り込んでおくことが大切です。長く安定して使うためには、最初の段階でしっかりと設計しましょう。

テスト運用

構築が完了したら、いきなり本番運用には移らず、テスト環境での運用を行います。
実際のターゲットサイトに対して巡回を行い、意図した通りにデータが取得できているか、不要な情報を含んでいないか、出力形式に誤りがないかを確認します。
この段階では以下のポイントに注目しましょう。

  • 意図したデータが正確に収集されているか
  • ページ構造の変化に対応できているか
  • サーバーに過剰な負荷をかけていないか(巡回間隔や回数の調整)

必要に応じて抽出ルールや巡回スケジュールを見直し、本番稼働に向けて精度と安定性を高めていきます。

本番運用・効果測定

テストを経て安定した動作が確認できたら、本番環境での運用に移行します。
設定したスケジュール通りに巡回・取得が行われているか定期的にモニタリングしつつ、収集データの活用による効果を測定していきましょう。

例えば、営業リストの質が上がった、コンテンツ集約にかかる作業時間が短縮された、価格調査の精度が向上したなど、導入目的に対して定量・定性的な成果を評価します。
また、Webサイト側の仕様変更に対応するため、運用中も定期的な保守とアップデートが求められます。

Web巡回システム運用時の注意点

Web巡回システム運用時の注意点

Web巡回システムは非常に便利な仕組みですが、運用にあたっては技術面だけでなく法的・倫理的な配慮も欠かせません。
特に、無断でのデータ収集や過剰なアクセスは、トラブルや信頼の低下を招くおそれがあります。ここでは、Web巡回システムを適切に運用するうえで重要な注意点を紹介します。

  • 法令遵守に努める
  • アクセス制限に配慮する
  • サーバー負荷対策を行う
  • データのセキュリティを確保しておく

これらの注意点について詳しく見ていきましょう。

法令遵守に努める

Web上の情報を収集する際は、著作権法や個人情報保護法などの法令を遵守する必要があります。
例えば、他人が作成した文章や画像を許可なく利用すると著作権の侵害となる可能性があります。また、名前やメールアドレスなど個人を特定できる情報を収集・利用する場合には、個人情報保護の観点から慎重な対応が求められるでしょう。

さらに、対象のWebサイトに利用規約が明記されている場合は、その内容に違反しないよう確認しておくことも重要です。法令だけでなく、相手企業や運営者の意向を尊重した運用が求められます。

アクセス制限に配慮する

クローラーの動作によって対象サイトに過度な負荷をかけてしまうと、サービス妨害と見なされる可能性があります。
そのため、Web巡回システムを運用する際は、前述した「robots.txt(ロボッツテキスト)」の確認や、巡回頻度やリクエスト間隔の配慮が必要です。一度に大量のアクセスを送るのではなく、一定の間隔を空けて穏やかに巡回を行うことで、対象サイトへの負荷を軽減し、健全な運用を実現できます。

サーバー負荷対策を行う

Web巡回システムは対象サイトだけでなく、自社のサーバーにも一定の負荷をかけます。
特に、大量のデータを短時間に収集するような処理を行う場合、自社サーバーの処理能力が追いつかず、レスポンスの遅延やシステム障害の原因になることがあります。

こうした問題を防ぐためには、巡回処理のスケジューリングや、リクエストの同時実行数の制御が重要です。
また、クラウドサーバーの活用や、処理をバッチ化して時間帯を分散させるなどの工夫も効果的です。処理のログを取得して負荷状況を可視化しておくと、ボトルネックの早期発見にもつながるでしょう。

効率的な収集とシステム安定性の両立を図るためにも、負荷を抑える設計・運用が求められます。

データのセキュリティを確保しておく

Web巡回システムで取得したデータには、業務に直結する重要な情報が含まれる場合があります。
例えば、自社の意思決定や営業活動に活用するリスト情報、SNSから抽出した感情データなど、漏洩や改ざんが起きた場合のリスクは軽視できません。

そのため、収集したデータは安全に保管し、不正アクセスや情報流出を防ぐ対策を講じる必要があります。具体的には、以下のような措置が挙げられます。

  • データベースのアクセス制限・暗号化
  • 通信経路のSSL/TLS対応
  • クラウドサービスのセキュリティ設定の強化
  • 社内でのアクセス権限の明確化と監査ログの取得

システムの利便性だけでなく、信頼性の高い情報管理体制を整えることが、長期的な運用の鍵となります。

Web巡回システムの導入はシルクラボラトリにお任せください

Web巡回システムの導入を検討している企業にとって、確かな技術力と豊富な実績を持つ開発パートナーの存在は欠かせません。
シルク・ラボラトリは、AI・ビッグデータ処理・システム開発を主軸に、高度なWebクローリング技術を提供する企業です。

同社は、創業以来25年以上にわたり、セキュリティ、金融、流通、医療など多様な業界のITニーズに対応してきました。特に、大量の非構造データを効率よく収集・処理する技術に強みを持ち、複雑な要件にも柔軟に対応可能です。

また、Webクローラーに限らず、AIアルゴリズムや自然言語処理技術との連携など、高度なデータ活用を前提としたソリューション提案も得意としています。単なるデータ収集にとどまらず、その先の分析・活用まで一貫して支援できる点が、シルク・ラボラトリの大きな特長といえるでしょう。

シルク・ラボラトリが開発した「シルククローラー」とは

「シルククローラー」は、Web上の膨大な情報を効率よく収集・統合するために、シルク・ラボラトリが設計したWeb巡回システムです。
このクローラーの特長は、単なる「収集ツール」ではなく、システム全体の一部として設計されている点にあります。

具体的には、複数の収集対象を横断的に処理し、業務システムやAI分析基盤とスムーズに連携する設計思想が組み込まれています。例えば、収集したデータをリアルタイムで外部システムにプッシュしたり、取得データに対して前処理・正規化を行った上で保存したりと、業務用途に耐えうる整合性と拡張性を備えています。

すでに、データモニタリングや自動通知システムと組み合わせた導入事例も多数あり、クローリング機能を核としながらも、業務プロセス全体を効率化できるプラットフォームとして活用されています。

シルククローラーは、企業ごとのニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるため、自社の業務に合うかお悩みの方にも対応いたします。

まとめ

Web巡回システムは、人の手では難しい大量の情報収集を自動化し、より正確でスピーディなデータ活用を可能にする強力な手段です。
導入にあたっては、クローラーの仕組みやスクレイピングとの違い、運用時の注意点などをしっかり理解した上で、自社の目的に合った設計を行うことが重要となります。

シルク・ラボラトリは、Webクローラーの開発から業務システムとの連携、セキュリティへの配慮まで、トータルでご支援しています。長年にわたり多様な業界で蓄積してきたノウハウを活かし、貴社の課題やニーズに合わせた最適なWeb巡回システムをご提案・構築いたします。情報収集の効率化や業務の自動化をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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