初心者でもわかる!画像解析の基本的なやり方と注意点
画像解析は、コンピュータを使って画像データから有用な情報を抽出する技術です。
画像解析と画像認識はよく混同されますが、画像解析は画像からの情報抽出に重点を置くのに対し、画像認識は特定のパターンを識別することに重点を置きます。
また、画像解析では機械学習やディープラーニングなどのアルゴリズムがよく用いられます。
画像解析は、製造業における不良品検出や農業での作物の生育状態のモニタリング、医療分野での診断支援など、さまざまな分野で活用されており、注目されている技術の一つです。
本記事では、画像解析の基本的なやり方と注意点などを初心者にもわかりやすくご紹介します。画像解析の導入をお考えの方は、ぜひご覧ください。
画像解析の基本的なやり方
画像解析の基本的なやり方は、大きく以下の4つのステップに分けられます。
- 画像の前処理
- 特徴量の抽出
- 分類器の学習
- 未知データの予測
各ステップでは、目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
1.画像の前処理
まず、分析したい写真を用意し、コンピューターに取り込みます。写真は、分析しやすいようにきれいに撮られているものを選びましょう。写真が暗かったり、ぼやけていたりする場合は、明るさや鮮明さを調整します。これを「前処理」と呼びます。
前処理を適切に行うことで、画像解析の精度を向上させることができます。前処理の方法は画像の特性や解析の目的によって異なるため、適切な手法を選択することが重要です。
2.特徴量の抽出
特徴量とは、画像を数値化したデータのことを指します。写真の中から形や色、模様など、分析に必要な特徴を見つけます。例えば、写真に犬が写っていれば、犬の形や色が特徴になるでしょう。 これを「特徴量の抽出」と呼びます。画像の特徴を数値化すると、次の項目で紹介する「分類器の学習」に用いることができます。
3.分類器の学習
分類器とは、画像のカテゴリ分けを自動で行う機能です。分類器の学習では、コンピューターに多くの写真を見せて、それぞれの特徴と正しい分類を覚えさせます。適切なデータセットを用意し、タスクに合ったアルゴリズムを選択することが重要です。
4.未知データの予測
学習済みのモデルを用いて、新しい未知の画像データに対して予測を行います。
まず、学習したコンピューターに、新しい写真を見せましょう。 コンピューターは、学習した方法で新しい写真を分類します。例えば、犬の写真を見せれば、「これは犬です」と判断することができます。これを「未知データの予測」と呼びます。
未知データの予測では、 未知のデータへの対応能力が重要です。十分な量の多様な学習データを用意したり、適切な前処理を行ったりして、未知のデータへの対応能力を高めましょう。未知のデータへの対応能力を高めることで、精度の高い画像解析につながります。
画像解析については以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
『画像解析の基礎知識。AIを使うメリット・デメリットを紹介』
画像解析と画像認識の違い
画像解析と画像認識はよく混同されますが、それぞれ異なる目的と機能を持っています。
画像認識は、画像を識別し、分類する技術です。具体的には、画像内の物体の形状、色、テクスチャなどの特徴量を検出し、数値化することが画像認識の主な役割です。これにより、画像内の物体を特定のカテゴリに分類することが可能になります。
画像解析は、画像認識で抽出した特徴量を用いて、物体が何であるかを分析・判断する機能です。画像解析では、抽出された特徴量を元に、機械学習やディープラーニングなどのアルゴリズムを用いて、物体のカテゴリを判定します。これにより、画像内の物体を自動的に識別し、分類することができます。
両者は密接に関連していますが、機能と目的が異なるため、画像解析を行う上では、この違いを理解しておくことが重要です。
画像解析で使われる主なアルゴリズム
画像解析で使われるアルゴリズムは、大きく分けて機械学習とディープラーニングの2つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
機械学習
機械学習は、データから規則性やパターンを学習し、新しいデータに対して予測や判断を行うアルゴリズムです。画像解析の分野でも広く利用されており、以下のような手法があります。
- サポートベクターマシン(SVM):サポートベクターマシン(SVM)は、データを高次元空間に写像し、クラス間の境界を最大化する超平面を求める手法です。画像の特徴量を入力し、カテゴリ分類などに用いられます。
- ランダムフォレスト:ランダムフォレストは、複数の決定木(質問を階層構造的につなげて正解を出す手法)を組み合わせたアンサンブル学習の一種です。各決定木が画像の特徴量を元に分類を行い、その結果を統合することで高い精度を実現します。
- k近傍法(k-NN):k近傍法(k-NN)は、新しいデータに対して、特徴空間上で最も近いk個の学習データのラベルを参照し、多数決で分類を行う手法です。
これらの機械学習手法は、画像の特徴量を元に分類や予測を行います。そのため、画像から適切な特徴量を抽出することが重要です。
ディープラーニング
ディープラーニングは、ニューラルネットワークを多層化することで、データの特徴を階層的に学習するアルゴリズムです。画像解析の分野では、以下のようなモデルが広く利用されています。
- 畳み込みニューラルネットワーク(CNN):畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像の局所的な特徴を抽出するための畳み込み層と、特徴量を統合するプーリング層を交互に積み重ねたモデルです。画像分類、物体検出、セグメンテーションなど、さまざまなタスクで高い性能を発揮します。
- オートエンコーダ:オートエンコーダは、入力データを低次元の特徴表現に圧縮し、再び元のデータを復元するように学習するモデルです。画像の次元削減や特徴抽出、異常検知などに利用されます。
- 敵対的生成ネットワーク(GAN):敵対的生成ネットワーク(GAN)は、生成器と識別器の2つのネットワークを競合的に学習させることで、リアルな画像の生成を可能にするモデルです。画像の生成やスタイル変換、超解像など、さまざまな応用が期待されています。
ディープラーニングモデルは、大量の学習データから自動的に特徴量を抽出できるため、特徴設計の手間が不要という利点があります。複雑な画像の特徴をとらえることができ、高い精度を実現できるでしょう。
一方で、大量のデータと計算リソースが必要となるため、専門知識を持っていない場合は作業に苦戦する可能性もあります。長時間の学習時間や開発コストが必要になること、モデルの解釈性が低いという課題もあります。
機械学習とディープラーニングを組み合わせることで、より高度な画像解析を実現できるでしょう。
画像解析に使える主なツールとライブラリ
画像解析を行う際には、以下のようなツールやライブラリが活用できます。
- OpenCV
- TensorFlow
- PyTorch
- MATLAB
使用目的に合わせて、上記のツールやライブラリを適切に選択することが大切です。それぞれの特徴を見ていきましょう。
OpenCV
OpenCVは画像解析に使える代表的なオープンソースライブラリです。C++、Python、Javaなど複数の言語に対応しています。OpenCVを使うと以下のようなことができます。
- 画像の読み込み、表示、保存、作成
- 画像のフィルタリング、変換
- 画像のトリミング
- エッジ検出、特徴点抽出
- 物体検出、顔認識
OpenCVには画像処理や画像解析に役立つ多彩な関数が用意されており、初心者でも比較的簡単に使い始めることができます。画像解析を学ぶ上で、まず習得しておくと良いライブラリの一つと言えるでしょう。
TensorFlow
TensorFlowは、Googleが開発したオープンソースの機械学習ライブラリです。TensorFlowでは、画像分類や物体検出、自然言語処理、音声認識、異常検知などを行うことができます。TensorFlowの主な特徴は以下の通りです。
- Pythonと親和性が高く、直感的で使いやすいAPIを提供
- 機械学習モデルの構築、学習、デプロイを効率的に行える
- CNNやRNNなどのニューラルネットワークを柔軟に設計可能
- 大規模データを高速に処理するための分散処理にも対応
- モバイルやエッジデバイスへの組み込みもサポート
TensorFlowを使うことで、研究者からエンジニアまで幅広いユーザーが、画像解析を含む多様な機械学習タスクを実現できるでしょう。
PyTorch
PyTorchは、Facebookが開発したPython向けのオープンソース機械学習ライブラリです。PyTorchを使うと、物体検出やセグメンテーション、画像生成などの画像解析タスクを簡単に実装できます。PyTorchの主な特徴は以下の通りです。
- Pythonベースで直感的に使いやすい
- 動的計算グラフによる柔軟性の高さ
- GPUを使った高速処理が可能
- 大規模なコミュニティによるサポートが充実
PyTorchは初心者にも使いやすく、かつ大規模なモデルも高速に学習できるため、画像解析を始めるのにおすすめのフレームワークの一つです。
MATLAB
MATLABは、画像解析を行う上で非常に有用なツールです。MATLABを使えば、画像の前処理や特徴量抽出や物体検出や追跡、セグメンテーションなど、画像解析のプロセス全体を一貫して実装できます。MATLABには以下のような特徴があります。
- 豊富な画像処理関数を搭載
- 行列計算に特化したプログラミング言語
- 視覚的にわかりやすいデータの可視化機能
- 機械学習やディープラーニングのツールボックスも用意
ただし、商用ライセンスが必要なため、コストが高くなる点には注意が必要です。
画像解析を行う上での注意点
画像解析を行う上では、以下のような点に注意が必要です。
- データの質と量の確保
- 適切な前処理の実施
- アルゴリズムの選択とハイパーパラメータの調整
- 過学習への対策
本項目では、それぞれの注意点について詳しくご紹介します。これらの点に注意しつつ、試行錯誤を重ねることで精度の高い画像解析モデルを構築することができるでしょう。
データの質と量の確保
画像解析において、データの質と量は非常に重要です。適切なデータを質・量ともに確保することで、高精度な画像解析が可能になります。
学習データは解析対象を適切に反映したものを用意し、十分な量のデータを確保しましょう。ノイズの少ない鮮明な画像を使用することや、特定のパターンに偏らないよう、バランスの取れたデータを収集することも大切です。
適切な前処理の実施
画像解析を行う上では、適切な前処理を施すことも忘れてはなりません。ノイズの除去やコントラストの強調、画像の正規化、特徴量の強調などを行いましょう。
前処理の組み合わせは解析対象の画像の性質や目的によって異なるため、対象に合わせて最適化する必要があります。適切な前処理を行うことで、後段の特徴量抽出や分類の精度を大きく向上できます。
アルゴリズムの選択とハイパーパラメータの調整
画像解析を行う際は、解析対象や目的に合わせて適切なアルゴリズムを選択することが重要です。主なアルゴリズムとしては、以下のようなものがあります。
- サポートベクターマシン(SVM)
- ランダムフォレスト
- ニューラルネットワーク(ディープラーニング)
どのアルゴリズムを使うかによって、解析精度やコストが大きく変わってきます。
また、アルゴリズムにはハイパーパラメータと呼ばれる設定値があり、これらを適切に調整することで解析精度を高めることができます。ハイパーパラメータの最適化には時間がかかるため、グリッドサーチやランダムサーチなどの自動最適化手法を活用するのがおすすめです。ハイパーパラメータは、前述した「分類器の学習」や「未知データの予測」でも活用します。調整によって分類精度が大きく変わるため、慎重に行いましょう。
過学習への対策
過学習は、学習データへの適合が過剰となり汎化性能が低下してしまう現象です。以下のような対策を講じることで、過学習を抑えることができます。
- 学習データの拡張(Data Augmentation):回転、反転、拡大縮小などにより学習データを水増しする
- 正則化の導入:L1正則化やL2正則化により、モデルの複雑さにペナルティを課す
- ドロップアウト(Dropout)の活用:ランダムにニューロンを無効化し、特定の特徴への過度な依存を防ぐ
- アーリーストッピング(Early Stopping)の適用:検証データの評価指標が改善しなくなったところで学習を打ち切る
以上の対策を適切に組み合わせることで、汎化性能の高いロバストなモデルを構築できます。
画像解析の活用事例
画像解析技術はさまざまな分野で活用されています。
- 製造業における不良品検出
- 医療分野での診断支援
- 自動運転車の環境認識
- 農業での作物の生育状態のモニタリング
以上の活用事例を詳しくご紹介します。
製造業における不良品検出
製造業の現場では、生産ラインで製品の品質を常にチェックする必要があります。不良品を見逃すと、大きな損失につながるためです。
そこで画像解析技術を活用することで、製品の外観検査を自動化できます。具体的な手順は以下の通りです。
- カメラで製品の画像を取得
- 画像の前処理(ノイズ除去、コントラスト調整など)
- 正常品の特徴量を機械学習で抽出
- 学習済みモデルを用いて、製品画像を正常品か不良品かに分類
このようにして、高速かつ高精度な不良品検出が可能になります。例えば、電子部品なら部品の欠落やはんだ不良、自動車なら塗装の傷やへこみ、食品なら異物混入、形状の乱れなどがわかります。
画像解析による自動検査は、人手による目視検査と比べて検査速度が格段に向上し、検査精度も一定に保てるというメリットがあります。製造業の生産性向上と品質管理に大きく貢献しています。
医療分野での診断支援
画像解析技術は医療分野でも活用されており、医師の診断を支援するツールとして期待されています。以下のような事例が挙げられます。
- X線やCT、MRI画像から腫瘍や病変の検出
- 眼底画像からの糖尿病性網膜症の診断
- 皮膚がんの悪性度判定
- 大腸内視鏡画像からのポリープ検出
画像解析を用いることで、医師の経験や主観に頼らず客観的な判断が可能となり、より正確で迅速な診断が期待できます。ただし、最終的な診断は医師の総合的な判断に委ねられるべきであり、画像解析はあくまで支援ツールという位置づけになります。
自動運転車の環境認識
自動運転車が安全に走行するためには、車両周辺の環境を正確に認識する必要があります。そのため、自動運転システムには高度な画像解析技術が不可欠です。画像解析を用いた自動運転車の環境認識では主に以下のような処理が行われます。
- カメラで取得した画像から、道路や車線、信号、歩行者などの特徴を抽出
- レーダーやLiDARで得られた距離情報と画像情報を統合
- 機械学習やディープラーニングを用いて、抽出した特徴から周辺環境を認識・判断
これらの処理により、自動運転車は周囲の車両や歩行者、道路状況などを認識し、安全運転に必要な判断を下すことができるようになります。
農業での作物の生育状態のモニタリング
画像解析技術は、農業分野でも活用が進んでいます。ドローンやセンサーカメラで撮影した画像データを解析することで、作物の生育状態を効率的にモニタリングできるようになりました。具体的には、以下のような用途があります。
- 作物の生育段階の判別
- 病害虫の早期発見
- 土壌水分量の推定
- 収穫適期の予測
これらの情報を画像解析で迅速に把握することで、農家は適切なタイミングで施肥や農薬散布、収穫などの作業を行えます。
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まとめ
本記事では、画像解析のやり方について詳しく解説しました。画像解析は、コンピュータビジョンの重要な分野の一つで、画像から有用な情報を抽出することを目的としています。
主なアルゴリズムとしては、機械学習やディープラーニングが使われます。OpenCVやTensorFlowなどのツール・ライブラリを活用することで、初心者でも比較的簡単に使い始めることができるでしょう。
記事でご紹介した通り、画像解析技術はさまざまな産業で活用され、作業の自動化や効率化、品質向上に大きく貢献しており、今後もさらなる発展と応用が期待される技術の一つです。画像解析の導入を検討されている方は、ぜひシルク・ラボラトリにお問い合わせください。