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IoT開発の始め方|基礎知識から具体的な手順、開発事例まで徹底解説

近年、IoT(Internet of Things)は私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらしています。あらゆるモノがインターネットにつながり、データの収集・分析・活用を通して、これまでにない価値を生み出せるようになりました。IoTという言葉自体はよく耳にするようになったものの、IoT開発を具体的にどのように進めるべきか、イメージしづらい方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事ではIoT開発の始め方について、基礎知識から具体的な手順、開発事例、そして開発のポイントまでを網羅的に解説します。この記事を通して、IoT開発の全体像を理解し、皆様のビジネスやプロジェクトに役立てていただければ幸いです。

IoTとは?

IoTとは、「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。インターネットに接続する対象が、パソコンやスマートフォンだけでなく、あらゆる「モノ」に広がることを意味しています。

センサーや通信機能を組み込んださまざまな機器がインターネットを通じてデータを送受信し、相互に接続することで、私たちの生活やビジネスをより便利で効率的に変革することが期待されています。

IoT開発でできること

IoT開発でできることは多岐にわたります。

例えば、自宅の家電を外出先から操作したり、農作物の生育状況をリアルタイムで監視したり、工場の生産ラインを自動化したりすることが可能です。

このように、IoTは生活の快適性向上から産業の効率化、都市課題の解決まで、幅広い分野で大きな可能性を秘めています。

IoT開発の手順

IoT開発の手順

IoT開発は、一般的に以下の手順で進められます。

  • 要件定義
  • 設計
  • 開発
  • テスト
  • デプロイ
  • 保守

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

要件定義

IoT開発を成功させるためには、まず要件定義を明確にすることが重要です。要件定義とは、開発するIoTシステムがどのような機能を持ち、どのような目的を達成するために作られるのかを明確にする作業です。具体的には、システムの利用者、利用シーン、必要な機能、収集するデータの種類、データの活用方法などを定義します。

要件定義が曖昧だと、開発の途中で想定外の機能追加や変更が発生し、開発期間の長期化やコスト増加につながる可能性があります。また、完成したシステムが当初の目的を達成できないといったリスクも高まるでしょう。

要件定義をしっかりと行うことで、後工程の手戻りを防ぎ、スムーズな開発を進めることができます。

設計

次に、IoTシステムのアーキテクチャを設計します。ハードウェアとソフトウェアの構成、データの流れ、ユーザーインターフェースを定義し、機能要件と非機能要件を満たす設計を策定します。

デバイス選定では、センサー、アクチュエータ、マイクロコントローラーなどを要件に合わせて選びましょう。処理能力、消費電力、通信方式、コストを考慮し、最適なものを決定します。

データモデルの設計も重要です。収集するデータの種類やフォーマット、保存方法を定め、データの整合性とセキュリティを確保します。

通信方式の設計では、デバイス間やクラウドとの通信方法を決めます。通信プロトコル、転送速度、セキュリティを考慮し、最適な方式を選択しましょう。

設計要素を整理し、ドキュメント化することで、開発の効率化とシステムの安定稼働につながります。

開発

開発フェーズでは、設計に基づきシステム構築を行います。ハードウェア選定、プログラミング、データ処理設定などが含まれます。

IoTシステム開発は、組み込みシステム開発とWebシステム開発の両方の側面を持ち、専門知識が必要となる場合もあるでしょう。

デバイス側の開発では、センサーデータを取得・処理するプログラムをマイコン上に実装します。C言語やC++などが用いられます。

クラウド側の開発では、送信されたデータの保存、分析、可視化を行うプログラムを実装します。PythonやJavaなどが利用されることが多く、これらの開発は並行して進められる場合もあります。

デバイスとクラウド間のデータ送受信、データ形式、API仕様などを綿密に設計しておくことが、連携をスムーズにします。開発段階では、随時テストを行い、設計通りに動作するか確認しながら進めることで、手戻りを減らせるでしょう。プログラムや設定情報は適切にバージョン管理することが重要です。

テスト

IoTシステムの開発において、テスト工程は非常に重要です。開発したシステムが正しく動作するかを確認し、バグや脆弱性を修正することで、システムの品質を確保します。

テスト工程では、以下のようなさまざまなテストを実施します。

  • 単体テスト

個々のモジュールが正しく動作するかを確認します。

  • 結合テスト

複数のモジュールを組み合わせた際に、正しく連携するかを確認します。

  • システムテスト

システム全体が要件定義に基づいて動作するかを確認します。

これらのテストを段階的に実施することで、早期に問題を発見し、修正できます。

デプロイ

IoTシステムを運用環境に配置する段階がデプロイです。デプロイは、開発したシステムをユーザーが利用できるようにする重要な工程です。

複雑なシステムでは、デプロイ作業に多くの手順が必要となるため、自動化ツールを活用して効率化を図ることが一般的です。クラウド環境の場合は、プロバイダーの提供するツールを活用することで効率的にデプロイを進められます。

一方、オンプレミス環境では、手動でサーバーやネットワークの設定を行う必要がある場合もあるでしょう。

デプロイ後は、システムが正しく動作しているかを確認するテストを実施します。想定されるシナリオに基づいて機能や性能を検証し、要件を満たしていることを確認することが重要です。

保守

IoTシステムは、開発して終わりではありません。システムを安定して稼働させるためには、デプロイ後の運用・保守が欠かせません。保守フェーズの主な作業は、システム監視、障害対応、バージョンアップ、セキュリティ対策です。

システム監視は、潜在的な問題の早期発見と迅速な対応を可能にします。障害発生時には、原因を特定し適切な対策を講じることで、システムのダウンタイムを最小限に抑えます。

IoT開発における技術要素

IoT開発には、さまざまな技術要素が関わってきます。IoTシステムを構築するには、以下のような多岐にわたる技術を理解し、適切に組み合わせることが重要です。

  • プログラミング言語
  • 通信プロトコル
  • データベース
  • クラウドプラットフォーム
  • セキュリティ対策

それぞれの技術要素について詳しく見ていきましょう。

プログラミング言語

IoT開発では、デバイスや目的に合ったプログラミング言語を選ぶことが重要です。

C言語やC++は、ハードウェア制御に強く、限られた資源で動くIoTデバイスに向いています。C言語はメモリの制御や処理速度の最適化に優れ、多くのIoTデバイスで使われています。C++はオブジェクト指向に対応し、大規模開発にも対応できます。

近年はPythonやJavaScriptも注目されています。Pythonはデータ分析や機械学習に強く、IoTデータの処理や分析に役立ちます。文法もシンプルで初心者にも学びやすいです。JavaScriptはWeb開発で広く使われており、Node.jsを使えばIoTデバイス開発にも利用できます。リアルタイム通信が必要なIoTアプリ開発に適しています。

このように、IoT開発にはさまざまな言語があり、目的に合わせて最適な言語を選ぶことが重要です。

IoT開発におすすめのプログラミング言語については以下の記事でさらに詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。

『IoT開発におすすめのプログラミング言語7選!特徴・用途を徹底比較』

通信プロトコル

IoTシステムでは、デバイス同士やクラウドとのデータ送受信にさまざまな通信プロトコルが用いられます。システム要件に適したプロトコルの選択が重要です。

例えば、近距離無線通信で代表的なBluetoothは、低消費電力・低コストというメリットがある一方、通信速度はそれほど速くありません。

Wi-Fiは高速通信が可能ですが、消費電力が大きいため、用途に応じて使い分けが必要です。

Zigbeeは、低消費電力で多数のデバイス接続が可能です。遠距離通信にはセルラー通信(LTE、5Gなど)が利用されます。広範囲をカバーし高速通信が可能ですが、コストと消費電力は高めです。

低消費電力で長距離通信を実現するLPWAも注目されており、Sigfox、LoRaWAN、NB-IoTなどがあります。その他、限られたリソースの環境で利用されるMQTTやCoAPも存在します。

データベース

IoTシステムでは、さまざまな機器やセンサーから大量のデータが生成されます。これらのデータを保存・管理するために、データベースは不可欠です。IoTシステムに適したデータベースを選択することで、データの活用を促進し、システムの効率的な運用を実現できます。

データベースには、大きく分けて、関係性を重視するRDBと柔軟性を重視するNoSQLの2種類があります。RDBは、データの整合性を保つことに優れており、構造化されたデータの管理に適しています。NoSQLデータベースは、スキーマレスで柔軟なデータ構造を持ち、大量データの高速処理に適しているでしょう。

IoTシステムでは、扱うデータの種類や量、処理速度の要件によって最適なデータベースが異なります。例えば、センサーデータのような構造化データにはRDBが、ソーシャルメディアデータのような非構造化データにはNoSQLデータベースが適しているでしょう。

それぞれの特性を理解し、適切なデータベースの選択が重要です。

クラウドプラットフォーム

IoT開発において、クラウドプラットフォームはデータの保存、処理、分析を効率化するために不可欠です。主要なプラットフォームとして、AWS IoT Core、Microsoft Azure IoT Hub、Google Cloud IoT Coreなどがあります。

AWS IoT Coreは、セキュアなデバイス接続とデータ分析を提供し、スケーラビリティにも優れています。

Microsoft Azure IoT Hubは双方向通信とデバイス管理機能を備え、Azureの他のサービスと容易に連携できます。Google Cloud IoT Coreはデータ分析と可視化機能を提供し、GoogleのAI/機械学習サービスとの連携も容易です。

これらのプラットフォームはそれぞれ異なる特徴を持つため、IoTシステムの要件に最適なものを選択しましょう。

セキュリティ対策

IoT機器はインターネットに接続されるため、常にサイバー攻撃のリスクにさらされています。安全に運用するには、適切なセキュリティ対策が不可欠です。

主な対策として、デバイス認証・データ暗号化・脆弱性診断が挙げられます。

  • デバイス認証

許可されたデバイスのみがアクセスできるよう制限(パスワード・デジタル証明書などを活用)。

  • データ暗号化

情報を暗号化し、不正アクセス時のデータ漏洩を防ぐ。

  • 脆弱性診断

システムの弱点を定期的にチェックし、速やかに修正。

これらの対策を徹底することで、IoTシステムのリスクを抑え、安全な運用が可能になります。

IoT開発の事例

IoT開発の事例

IoT開発はさまざまな分野で活用されており、私たちの生活をより便利で豊かにしています。ここでは、具体的な事例をいくつかご紹介します。

  • スマートホーム
  • スマート農業
  • スマートファクトリー
  • スマートシティ

それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。

スマートホーム

スマートホームとは、IoT技術を活用して、家電製品や住宅設備をインターネットに接続し、自動化や遠隔操作を可能にすることで、居住者の快適性や利便性を向上させるシステムです。具体的には、照明、エアコン、テレビ、セキュリティシステム、冷蔵庫などが挙げられます。これらの機器をスマートフォンや音声アシスタントで制御することで、エネルギー効率の向上や防犯対策の強化を実現できます。

例えば、外出先からスマートフォンでエアコンの電源をオンにすることで、帰宅時に快適な温度で過ごせるようになります。また、照明を自動で点灯・消灯させることで、エネルギーの無駄を省くことも可能です。

スマートホームは、IoTの普及とともに急速に進化しており、今後もさらなる利便性の向上が期待されています。

スマート農業

スマート農業は、IoTを活用し、農業の効率化と生産性向上を目指します。センサー等で農作物の生育状況や環境データをリアルタイムに収集・分析し、農作業の最適化、品質向上、収穫量増加を図ることができます。

例えば、土壌センサーで水分量や栄養素を計測し、自動で水やりや施肥を行うシステムがあります。ドローンで農薬散布を自動化したり、生育状況をモニタリングし、病害虫の早期発見・対策も可能です。

スマート農業は、労働力不足解消や農業経営の安定化にも貢献し、高齢化が進む農業従事者の負担軽減、若者世代の就農促進にも期待されています。データに基づいた精密な農業管理は、品質向上やブランド化にもつながり、農業の収益性向上に貢献します。

スマートファクトリー

スマートファクトリーとは、IoTを活用して工場の生産性や効率性を向上させる取り組みです。工場内の機器や設備をネットワークで接続し、データの収集・分析・活用を行うことで、リアルタイムでの状況把握、自動制御、予知保修などが可能になります。

具体的には、センサーによって機械の稼働状況や製品の品質データを収集し、クラウドプラットフォームに送信します。これらのデータはAIによって分析され、生産ラインの最適化や故障の予兆検知などに役立てられます。

スマートシティ

スマートシティとは、IoTを活用して都市のインフラやサービスを高度化し、市民生活の質を向上させる取り組みです。交通、エネルギー、防災、医療、行政など多くの分野で活用されています。

  • 交通

センサーで収集したデータをもとに信号を制御し、渋滞緩和や事故削減を実現。リアルタイムの渋滞情報提供や自動運転技術にも活用。

  • エネルギー

スマートメーターで電力使用量を可視化し、効率的なエネルギー運用を支援。再生可能エネルギーの発電量や電力需要を予測し、最適な供給を実現。

  • 防災

センサーネットワークで災害情報を収集し、迅速な避難誘導やインフラ復旧を支援。

このように、スマートシティの発展により、都市の課題解決や暮らしの快適化が進んでいます。

IoT開発のポイントとは

IoT開発を成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

  • セキュリティを確保する
  • コストを最適化する
  • スケーラビリティを確保する
  • 適切な技術を選定する

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

セキュリティを確保する

IoT機器はインターネットに接続されるため、サイバー攻撃のリスクが伴います。セキュリティ対策が不十分だと、データ漏洩やシステム乗っ取りなどの被害につながりかねません。IoT開発ではセキュリティ確保が最重要課題です。

安全なIoTシステム構築には、多層的な防御が必要です。デバイスレベルでは、強固なパスワード設定やファームウェア更新など基本対策を徹底します。通信経路はデータ暗号化やアクセス制御で不正アクセスを防ぎます。クラウド上ではアクセス権限設定やセキュリティ監査でデータを守りましょう。

コストを最適化する

コスト最適化には、まず初期費用を抑えることが重要です。必要最低限の機能のデバイスを選択したり、オープンソースを活用したりすることで費用を抑えられます。

運用費用を抑えるには、低消費電力デバイスを選択し、クラウドサービスも適切なプランを選びましょう。コスト最適化には初期費用と運用費用のバランスが重要です。初期費用を抑えすぎると運用費用が上がり、初期費用をかけすぎると投資回収に時間がかかります。プロジェクトの規模や期間を考慮し、最適なバランスを見つけることが重要です。

スケーラビリティを確保する

IoTシステムは、小規模から始めて徐々に拡大していくことが多いため、スケーラビリティの確保が重要です。

スケーラビリティとは、システムの規模を容易に変更できる能力のことで、具体的には、デバイスの追加やデータ量の増加に対応できる柔軟性を指します。

スケーラビリティが低いシステムは、将来的な拡張に対応できず、システム全体の改修が必要となる場合もあります。

スケーラビリティを確保するためには、クラウドプラットフォームの活用が有効です。クラウドプラットフォームは、必要な時に必要な分のリソースを確保できるため、柔軟なシステム構築が可能となります。システムの各機能を独立してスケーリングできるマイクロサービスアーキテクチャも有効です。さらに、データ量の増加に対応できるデータベースを選定することも重要です。

適切な技術を選定する

IoT開発を成功させるには、適切な技術の選定が重要です。IoTシステムは多くの技術要素で構成されるため、プロジェクトの目的や要件、予算、開発期間を考慮しながら、最適な選択を行う必要があります。

上述したように、プログラミング言語は開発効率や性能要件を踏まえて選びます。

データベースなら、データ量や頻度、セキュリティ要件に応じて、クラウド型やエッジ型などのデータベースを選定する必要があるでしょう。

セキュリティ対策は、デバイス認証やデータ暗号化、脆弱性管理などを通じて、多層的なセキュリティを構築する必要があります。

これらの技術要素をバランスよく組み合わせることで、IoTプロジェクトを成功へと導くことができるでしょう。

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シルク・ラボラトリ

この記事では、IoT開発の始め方について、基礎知識から具体的な手順、開発事例までを網羅的に解説しました。IoTは、あらゆるモノがインターネットに接続されることで、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしています。IoT開発は複雑で多岐にわたる技術要素を含むため、それぞれの段階で適切な知識と技術が必要です。

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