プロトタイプ開発とは

プロトタイプ開発とは?手法やメリットをわかりやすく解説

近年、ビジネスの世界では、顧客のニーズを素早く捉えた製品やサービスを市場に投入することが求められています。そのようなビジネス環境の中で注目を集めているのが「プロトタイプ開発」です。

本記事では、プロトタイプ開発の概要、メリット・デメリット、具体的な手順まで詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

プロトタイプ開発とは?

プロトタイプ開発とは、開発する製品やシステムをプロトタイプとして早期に形にすることで、使い勝手や機能を具体的に確認しながら開発を進める手法です。

従来の開発手法では、設計図や仕様書などをもとに進めるため、開発の終盤になって初めて実際の製品イメージとのズレに気づく場合がありました。このような手戻りを防ぐため、プロトタイプ開発では、開発の初期段階で実際に動作する試作品(プロトタイプ)を作成します。そして、試作品を用いた検証やユーザーからのフィードバックを反映しながら開発を進めることで、より完成度の高い製品を効率的に開発することを目指します。

プロトタイプ開発は、開発における試行錯誤を可能にし、開発リスクを低減する効果的な手法として注目されています。

プロトタイプ開発の手順

プロトタイプ開発は、以下の手順に沿って進められます。

  1. 目的・目標の設定

プロトタイプ開発を行う目的や目標を設定します。何のためにプロトタイプを作るのか、何を検証したいのかを明確にすることが重要です。

  1. ターゲットユーザーの決定

どのようなユーザーをターゲットとするかを明確化します。誰に向けてプロトタイプを作るのかを具体的に想定することで、開発の方向性を定めることができます。

  1. 必要最低限の機能選定

プロトタイプに実装する必要最低限の機能を決定します。

全ての機能を盛り込むのではなく、コアとなる機能に絞り込むことで、効率的な開発が可能になります。

  1. プロトタイプ作成

以上の準備を踏まえて、実際にプロトタイプを作成します。

ワイヤーフレーム、モックアップ、プロトタイプといった段階的な開発手法を用いることで、完成イメージを共有しながら開発を進めることができます。

  1. テスト・評価

作成したプロトタイプは、ターゲットユーザーによるテスト・評価を行います。実際にプロトタイプを使用してもらい、フィードバックを得ることで、改善点を洗い出すことができます。

  1. 改善

得られたフィードバックを基に、プロトタイプを改善していきます。この改善プロセスを繰り返すことで、より高品質なプロトタイプへと仕上げることができます。

以上のように、プロトタイプ開発は段階的なプロセスを経て行われます。各段階における丁寧な作業と、ユーザーからのフィードバックを重視することで、最終的に求められる製品の開発へとつなげることができます。

プロトタイプ開発の種類

プロトタイプ開発は、大きく分けて以下の2種類に分けられます。

  • 使い捨て型プロトタイプ開発
  • 進化的プロトタイプ開発

それぞれの特徴を見ていきましょう。

使い捨て型プロトタイプ開発

使い捨て型プロトタイプ開発とは、試作品を作成し、その後に改善点を洗い出して最終的に破棄する開発手法のことを指します。この手法は、ラピッドプロトタイピングとも呼ばれています。

この開発方法では、ユーザーに見せるフロント画面のみを対象に試作品を作ることで、ユーザーインターフェース(UI)やユーザー体験(UX)の課題を早期に発見できます。また、廃棄することを前提にしているため、低価格かつ短期間でプロトタイプを作成できるのが大きなメリットです。

進化的プロトタイプ開発

進化的プロトタイプ開発とは、初期のプロトタイプを開発した後、ユーザーからのフィードバックやテスト結果をもとに、プロトタイプを徐々に改善し、最終的な製品へと進化させていく開発手法です。ブレッドボード・プロトタイピングと呼ばれることもあります。

従来型の開発手法のように、開発の終盤になってからユーザーテストを実施すると、大きな手戻りが発生する可能性があります。しかし、進化的プロトタイプ開発では、開発の初期段階からユーザーを巻き込むことで、手戻りを最小限に抑え、開発期間の短縮とコスト削減を実現できます。

ただし、進化的プロトタイプ開発は、開発プロセスが複雑になりやすく、開発チームとユーザー間で綿密なコミュニケーションが必要になることに注意が必要です。

プロトタイプ開発とよく似た開発手法との違い

プロトタイプ開発とよく似た開発手法との違い

プロトタイプ開発と混同されがちな開発手法として、以下のようなものがあります。

  • モックアップ
  • ウォーターフォール開発
  • アジャイル開発
  • MVP開発

これらの開発手法は、プロトタイプ開発と組み合わせて用いられることも多くあります。それぞれの目的や特徴を理解し、最適な手法の選択が重要です。それぞれの特徴を詳しく紹介します。

モックアップ

プロトタイプと混同されがちな手法に「モックアップ」があります。モックアップとは、製品の外観やデザイン、操作感を視覚的に表現した模型や試作品のことです。

例えば、ウェブサイトやアプリ開発において、モックアップはボタンの配置や画面遷移を視覚的に示すことで、デザインの完成イメージを共有するために使用されます。

プロトタイプが実際に動作する機能を備えているのに対し、モックアップは見た目の確認を目的とする点が大きな違いです。

ウォーターフォール開発

「ウォーターフォール開発」は、システム開発における手法の一つで、滝の水が上から下に流れる様子に由来し、各工程を順に進めることを特徴としています。まず要件定義を行い、その後に設計、実装、テスト、リリースと続きます。各工程が完了した後は、次の工程に移行し、前の工程に戻ることはありません。

この手法のメリットは、計画が立てやすく、進捗管理が容易である点です。一方で、一度工程が進むと後戻りして修正することが難しいため、柔軟性や変更への対応力という面でプロトタイプ開発とは大きく異なります。

アジャイル開発

アジャイル開発では、開発期間を短いサイクルに区切り、各サイクルごとに検証、評価、改良を行います。顧客との密なコミュニケーションを重視し、開発中の仕様変更や機能追加にも柔軟に対応できるのが特徴です。

検証、評価、改良を繰り返すプロセスはプロトタイプ開発と共通していますが、アジャイル開発の大きな違いは「プロトタイプを作成せずに、本番環境で開発を進める」という点です。

MVP開発

MVP開発は「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」の略称で、ユーザーに提供するために必要最低限の機能を備えた製品を開発し、迅速にフィードバックを得ることを目的とした手法です。このフィードバックを活用して、製品の改良を行います。

プロトタイプ開発とMVP開発は、いずれも初期段階でユーザーに製品を体験してもらい、開発の方向性を修正するという点で共通しています。しかし、プロトタイプ開発は特定の機能に焦点を当て、完成形のイメージを具体化するための「試作品」を作成するのに対し、MVP開発は市場に投入可能な品質を保ちながら、必要最小限の機能を持つ「製品」を開発することが特徴です。

プロトタイプ開発のメリット

プロトタイプ開発には、多くのメリットがあります。主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

  • より良い製品開発が可能になる
  • リスクの早期発見・改善が可能になる
  • 機能の修正や変更にも柔軟に対応できる

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

より良い製品開発が可能になる

プロトタイプを作成し、それを用いてユーザーテストや社内レビューを行うことで、開発者や関係者は、実際の製品イメージを具体的に共有できます。開発の初期段階でユーザーの反応や意見を直接的に得ることで、使い勝手や機能に関する問題点、要望を早期に発見し、改善していくことが可能になります。結果として、開発の後半になってから大幅な仕様変更や機能追加が発生するリスクを低減し、開発期間の短縮やコスト削減にもつながるでしょう。さらに、ユーザーのニーズを的確にくみ取った、より質の高い製品を開発することにより、顧客満足度の向上や競争優位性の確保も期待できます。

リスクの早期発見・改善が可能になる

プロトタイプを作成することによって、開発の初期段階で問題点や改善点を見つけることが可能になります。開発の後期段階になってから問題が発覚した場合、大幅な設計変更や開発のやり直しが必要となり、時間やコストが大きく増加してしまう可能性もあるでしょう。

プロトタイプ開発では、実際に動作するプロトタイプを用いてユーザーにフィードバックを得ることで、ユーザーニーズとのズレや潜在的な問題点を早期に発見し、改善していくことができます。開発中のリスクを早期に発見し、対策を立てることで、システム全体の品質向上にも大きく貢献します。

機能の修正や変更にも柔軟に対応できる

プロトタイプ開発では、開発の初期段階で実際に動作する製品を形にするため、ユーザーは具体的なイメージを持ってフィードバックを返せます。このフィードバックをもとに、開発者は機能の修正や変更を柔軟に行うことが可能です。したがって、プロトタイプ開発は、従来のウォーターフォール開発のように開発の終盤で仕様変更を行う場合と比べて、大幅な手戻りを防ぐという大きなメリットがあります。

プロトタイプ開発のデメリット

プロトタイプ開発は多くのメリットがある開発手法ですが、いくつかのデメリットも存在します。プロトタイプ開発のデメリットとして、主に下記のような点が挙げられます。

  • 大規模開発には向いていない場合がある
  • コスト増加の可能性がある
  • 開発者の負担が大きくなる可能性がある

これらのデメリットを踏まえた上で、プロトタイプ開発を採用するかどうかを検討する必要があります。

大規模開発には向いていない場合がある

プロトタイプ開発は、すべての開発プロジェクトに最適なわけではありません。特に、大規模開発には向いていない場合があります。

プロトタイプ開発は大規模開発の場合、開発範囲が広範囲に及ぶため、プロトタイプ作成の工数が増大し、スケジュールが長期化する可能性があります。また、関係者も多岐にわたるため、プロトタイプの評価やフィードバックを集約するのも容易ではありません。このような理由から、大規模開発においては、プロトタイプ開発のメリットよりもデメリットが目立ってしまうケースも考えられます。

コスト増加の可能性がある

プロトタイプ開発では、修正を繰り返しながら開発を進めるため、当初の見積もりよりも開発費用が膨らんでしまう可能性があります。

開発期間が延びることで人件費がかさんでしまったり、想定外の機能追加や修正が必要になったりした場合に追加費用が発生する可能性もあるでしょう。社内の開発リソースが不足して外部に依頼する場合は、事前に開発費用をしっかりと確認することが大切です。見積もり内容を詳細化し、費用増加のリスクを最小限に抑えるよう努めましょう。

開発者の負担が大きくなる可能性がある

プロトタイプ開発では、短期間でプロトタイプを作成し、修正を繰り返すというサイクルを回すため、開発者の負担が大きくなる可能性があります。

例えば、プロトタイプの修正や変更が相次いだ場合、開発者はその度に作業が発生し、スケジュールに影響が出ることがあるでしょう。

このような要因により、開発者の負担が大きくなり、開発効率が低下する可能性もあることに注意が必要です。

プロトタイプ開発が向いているケースとは

プロトタイプ開発が向いているケースとは

プロトタイプ開発はあらゆる開発に万能なわけではありません。以下のようなケースでは、プロトタイプ開発が特に有効です。

  • 新規性・複雑性の高い製品開発の場合
  • UIが重要な製品開発の場合
  • 依頼者がシステム開発に不慣れな案件の場合

上記のようなケースでは、プロトタイプ開発のメリットを最大限に活かすことができます。それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

新規性・複雑性の高い製品開発の場合

新規性や複雑性の高い製品を開発する場合、プロトタイプ開発は非常に有効です。従来にない製品やシステムにおいては、開発に着手する前にプロトタイプで実現可能性や具体的な仕様を明確にすることが重要です。プロトタイプを作成することで、開発チームと顧客の間で認識のズレを解消し、共通の理解を深めることができます。

また、複雑なシステムでは設計段階で想定していなかった問題が発生する可能性もありますが、プロトタイプを作成し実際に動作を確認することで、リスクを早期に発見し、適切な対応策を検討できるでしょう。

UIが重要な製品開発の場合

ユーザーインターフェース(UI)が重要な製品開発においても、プロトタイプ開発は非常に有効です。なぜなら、実際に動作するプロトタイプを作成し、ユーザーに体験してもらうことで、UIの使い勝手やデザインに対するフィードバックを早期に得られ、開発の初期段階で改善を図ることができるからです。

例えば、スマホアプリ開発やウェブサイト制作では、ボタンの配置や画面遷移など、UIがユーザーの満足度に大きく影響します。プロトタイプを活用することで、ユーザーにとって本当に使いやすいUIを追求できるでしょう。

依頼者がシステム開発に不慣れな案件の場合

システム開発の経験が少ない依頼者の場合、言葉や資料だけではイメージの正しい共有が難しいケースも少なくありません。そのような場合に、プロトタイプを作成して視覚的に確認してもらうことで、認識のズレや誤解を未然に防ぐことができます。依頼者が開発プロセスを理解していない場合、プロトタイプの開発を通じて開発プロセスを体験することで、理解を深められるでしょう。

依頼者と開発チームとの認識の食い違いは、プロジェクトの遅延や追加コスト発生のリスクを高めます。プロトタイプを活用することで、依頼者と開発チーム間の認識を早期に合わせ、円滑な開発体制を築くことが可能になります。

プロトタイプ開発が向いていないケースとは

プロトタイプ開発は万能な開発手法ではありません。プロジェクトの性質によっては、費用対効果が低い、開発期間が長くなってしまうなどのデメリットが目立つ場合もあります。デメリットとして「大規模開発には向いていない場合がある」とお伝えしましたが、それ以外にも、以下のようなケースではプロトタイプ開発をおすすめできません。

  • プロトタイプの確認に時間がかかる場合
  • すでに前例があるプロジェクトの場合

それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

プロトタイプの確認に時間がかかる場合

プロトタイプを確認するために多くの時間を要するプロジェクトでは、迅速なフィードバックが求められます。確認プロセスが長引くと、開発のスピードが遅れ、全体の進行に影響を及ぼす可能性があります

プロトタイプ開発は、関係者間で認識の食い違いを減らし、開発を円滑に進めるために有効ですが、試作品の確認や意見をまとめるプロセスに時間がかかってしまうと、開発全体の遅延につながりかねません。

プロトタイプを確認するために多くの時間を要するプロジェクトでは、迅速なフィードバックが求められます。確認プロセスが長引くと、開発のスピードが遅れ、全体の進行に影響を及ぼす可能性があるでしょう。

すでに前例があるプロジェクトの場合

すでに類似のプロジェクトや製品が存在する場合、プロトタイプを作成する必要がないかもしれません。例えば、過去に全く同じシステムを開発したことがある場合、機能やデザインなどがすでに確定しており、試作品で確認する必要がないためです。このような場合は、プロトタイプ開発を行わずに、既存のシステムを参考に開発を進める方が効率的です。

既存システムの開発で得られた知見や経験を活かせる場合や、開発期間の短縮やコスト削減を重視する場合には、プロトタイプ開発ではなく、既存システムをベースとした開発を検討すべきでしょう。

プロトタイプ開発ならシルク・ラボラトリにご相談ください

シルク・ラボラトリ

プロトタイプ開発は、経験豊富な開発会社に依頼することで、よりスムーズかつ効果的に進めることができます。

シルク・ラボラトリでは、さまざまな企業の新規システム開発を支援しています。当社には経験豊富なエンジニアやデザイナーが在籍しており、高品質なプロトタイプの短期間での開発が可能です。また、お客さまとのコミュニケーションを密にとりながら開発を進めるため、イメージ通りのプロトタイプを実現できます。技術基盤をベースに、豊富な経験とノウハウを活かして、お客さまのビジネスをサポートいたします。

プロトタイプ開発を検討されている方は、ぜひ一度シルク・ラボラトリにご相談ください。

お問い合わせ

まとめ

プロトタイプ開発は、開発の初期段階で、実際に動作する製品の試作品を作ることで、製品開発の効率化やリスク軽減を図る開発手法です。プロトタイプを作成することで、開発者と依頼者の認識の食い違いを防ぎ、より良い製品開発を効率的に行うことが可能になります。

新規性・複雑性の高い製品開発やUIが重要な製品開発など、プロトタイプ開発のメリットを最大限に活かせるケースでは、積極的にプロトタイプ開発を取り入れることを検討してみましょう。

シルク・ラボラトリは、お客さまのニーズに合わせた最適なプロトタイプ開発を提供いたします。豊富な経験と実績を持つ専門チームが、お客さまの製品開発を成功に導きます。プロトタイプ開発に関するご相談は、ぜひシルク・ラボラトリにお任せください。