画像解析でできること10選|手法や導入のメリット・デメリットも紹介

近年、ディープラーニングの発展に伴い、画像解析技術が急速に進歩しています。

画像解析とは、カメラなどで撮影した画像データから、コンピュータを用いて有用な情報を抽出する技術のことです。この技術は、多岐にわたる分野・用途で活用されています。

そこで本記事では、画像解析の代表的な手法とともに、具体的な活用事例を10個ご紹介します。また、画像解析を導入するメリットとデメリットについても解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。

画像解析の手法とは

画像解析には主に以下の3つの手法があります。

手法概要用途例
画像分類画像データをあらかじめ定義したカテゴリーに分類製品の異常検知、ECサイトの商品検索など
物体検出画像の中から特定のオブジェクトを検出不審物や不審者の検知など
セグメンテーション画像内の各ピクセルを特定のカテゴリーに分す自動運転の障害物認識など

このように、目的に応じて最適な画像解析手法を選択することが重要です。それぞれの手法について詳しく見ていきましょう。

画像分類

画像分類は、画像解析の基本的な手法の一つです。与えられた画像データをあらかじめ定義したカテゴリーに分類することを目的としています。具体的な処理の流れは以下の通りです。

  1. 大量の画像データとそのカテゴリーラベルを用意し、学習データとする
  2. ディープラーニングなどの機械学習アルゴリズムを用いてモデルを学習させる
  3. 学習済みモデルに新しい画像を入力し、どのカテゴリーに属するか推論する

高精度な画像分類を実現するには、大量の学習データと、問題設定に適したモデルの選定が重要です。

画像検出

画像検出は、与えられた画像の中から特定のオブジェクトを検出する手法です。画像検出では以下のような処理が行われます。

  1. 画像内のオブジェクトの位置を特定
  2. オブジェクトを分類
  3. オブジェクトの位置と分類結果を出力

これらの手法を用いることで、画像内の人や車、動物、物体などを高精度で検出することが可能です。画像検出は、監視カメラ映像からの不審者検知や、自動運転車の障害物検知など、幅広い分野で活用されています。

画像セグメンテーション

画像セグメンテーションとは、画像内の各ピクセルを特定のカテゴリーに分類する手法です。画像セグメンテーションは物体の詳細な形状把握に適しており、ピクセル単位の高精度な認識が可能です。

一方で、画像セグメンテーションは複雑なタスクであるため、高性能なGPUが不可欠であることや、高品質なセグメンテーションを提供するには大量のラベル付きデータが必要になることなどが課題として挙げられます。

画像解析でできること10選

画像解析技術は、製造業、流通・小売業、農業、交通・運輸業、インフラ・建設業、医療・福祉など、さまざまな分野で活用されています。

本項目では、画像解析でできることを10点挙げてご紹介します。

人数カウントや属性把握

画像解析の活用で、映像から人数をカウントしたり、年齢や性別などの属性を把握したりすることが可能です。例えば以下のような場面で活用できます。

  • 商業施設でのマーケティング分析
  • イベント会場での混雑状況の見える化
  • オフィスでの在席状況の把握

人数カウントや属性把握を自動化することで、人手による集計の手間を大幅に削減できます。また、カメラで撮影した映像から客観的なデータを取得できるため、正確な分析が可能となります。

ただし、カメラの設置位置や解像度、照明環境などによって精度が左右されるため、導入に際しては十分な検証が必要です。また、プライバシーに配慮し、個人情報の取り扱いにも注意が必要となります。

入退室管理や在室状況の把握

画像解析は入退室管理や在室状況の把握にも活用できます。カメラで撮影した画像から人物を検出し、入退室の時間や人数をカウントすることで、いつ、誰が、どこに、どれくらいの人数が出入りしたかを正確に把握できるのです。

また、リアルタイムに室内の在室状況をモニタリングすることで、以下のようなさまざまな場面での活用が期待できます。

  • オフィスでの会議室の利用状況把握、不要な照明の消灯
  • 商業施設の混雑状況の見える化、レジの人員配置の最適化
  • 学校の教室の在室管理、不審者の侵入検知

プライバシーに配慮しつつ、入退室管理や在室把握を自動化・効率化することで、人手による管理コストを大幅に削減できるでしょう。

異常行動や不審者の検知

画像解析によって、人々の異常行動や不審者の検知が可能になります。具体的には以下のようなことができます。

  • 人の動きや姿勢から危険な行動を検知
  • 不審者の侵入や長時間の滞在を検知
  • 特定エリアへの立ち入りを検知

このように、画像解析を活用することで人の目では捉えきれない異常や不審な行動をいち早く発見し、迅速に対応できます。 施設の安全性向上や犯罪の未然防止に役立つ技術といえるでしょう。導入により、警備の効率化とともに、来訪者の安全・安心の確保が期待できます。

製品の品質管理や不良品検知

製造業では、製品の品質管理や不良品の検知に画像解析が活用されています。具体的な活用事例としては、以下のようなものがあります。

  • 電子部品の基板の傷や汚れ、はんだ付け不良の検出
  • 自動車の塗装の欠陥や部品の組み付け不良の検出
  • 食品の異物混入や形状の異常の検出

製品の品質管理や不良品検知に画像解析を取り入れることで、人の目では見落としがちな微細な傷や汚れを高精度で検出でき、検査時間も大幅に短縮が可能です。製品の信頼性向上とブランドイメージの向上につながるでしょう。

在庫管理や仕分け作業の自動化

棚卸しやピッキング、入出荷検品は、目視で一つずつ確認し、手作業で数日かかることがあります。画像解析技術を倉庫内の在庫管理や仕分け作業に活用することで、作業の自動化と効率化が可能です。具体的には以下のようなことができます。

  • 商品の種類や個数をカメラで自動認識
  • ピッキング作業者のハンズフリー化と動線最適化
  • 入出荷検品を自動で実施

このように、画像解析による在庫管理や仕分け作業の自動化は、大幅な作業時間の短縮とヒューマンエラー削減を実現します。倉庫内のさまざまな工程に画像解析を導入することで、業務全体の最適化が可能となるでしょう。

農作物の生育状況や熟成度の把握

画像解析技術は、農業分野においても大きな役割を果たしています。ドローンやカメラで撮影した画像から、以下のような農作物の生育状況や熟成度を把握できます。

  • 作物の生育ステージの判定
  • 病気や害虫被害の早期発見
  • 収穫適期の予測
  • 土壌の水分量や養分の把握

これらの情報を活用することで、農家は適切なタイミングで必要な対策を講じることが可能になります。例えば、病気の兆候を早期に発見し、農薬散布などの処置を施すことで、被害を最小限に抑えられます。また、画像解析による熟成度の判定は、収穫作業の効率化にも貢献します。

交通量調査や渋滞予測

画像解析は、交通量調査や渋滞予測にも活用されています。道路に設置されたカメラから取得した画像を解析することで、通過する車両の台数や車種別の交通量、平均速度や渋滞状況

などの情報を把握できます。

これらの情報を継続的に収集・分析することで、以下のように活用できます。

  • 道路整備や信号制御の最適化
  • ドライバーへの最適ルート案内
  • 迅速な事故対応と二次災害防止

時間帯別の交通量変動や渋滞傾向の予測が可能になるため、リアルタイムの交通状況をドライバーに提供し、最適なルート案内に役立てることもできます。このように、画像解析は交通インフラの効率化と安全性向上に貢献しています。

自動運転における障害物検知

自動運転技術の実現において、画像解析による障害物検知は欠かせません。車載カメラで撮影した画像から、歩行者や他の車両、信号機などを認識し、安全な走行を実現できます。

画像解析を取り入れることで、自動運転車は周囲の状況を正確に把握し、適切な判断と制御を行うことができます。ただし、あらゆる環境下で確実に障害物を検知するには、膨大な学習データと高度なアルゴリズムが必要であり、技術的なハードルは高いのが現状です。

高齢者施設での転倒・転落防止

高齢者施設では、入居者の転倒・転落事故が大きな問題となっています。画像解析技術を活用することで、こうした事故の防止に役立てることができます。具体的には、カメラで入居者の動きを常時モニタリングし、転倒リスクの高い不安定な動きを検知したり、ベッドからの立ち上がりや部屋からの離脱など、要注意動作を把握して職員に通知したりすることが可能です。

また、過去の事故データと組み合わせることで、転倒リスクが高まるタイミングの予測も可能でしょう。

このように、画像解析を活用することで、人の目では捉えきれない異変を早期に発見し、転倒・転落事故の防止につなげることができるのです。

医療分野での画像診断支援

医療現場において、画像解析技術は画像診断の支援ツールとして活用が広がっています。主に以下のような場面で画像解析が役立っています。

  • X線やCT、MRI画像からの病変検出
  • 内視鏡画像からのがんなどの異常部位検知
  • 細胞・組織画像からの異常細胞の検出
  • 眼底写真からの眼疾患の検知

特に近年では、深層学習を用いた高精度な画像解析モデルの開発が進んでおり、医師の診断をサポートする有望なツールとして期待されています。

医師の最終判断が必要であるなどの課題はありますが、画像解析による診断支援は、医療の質向上と効率化につながっています。一方で、法規制への対応や誤検知リスクへの備えなど、実運用に向けた課題にも取り組む必要があるでしょう。

画像解析を導入するメリットとデメリット

画像解析の導入には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリットデメリット
・人件費の削減と省力化
・客観的データに基づく意思決定
・高速かつ継続的なモニタリング
・導入コストと専門知識の必要性
・精度向上までの時間と学習データの確保

それぞれ詳しく見ていきましょう。

メリット①:人件費の削減と省力化

画像解析を導入することで、人手で行っていた作業を自動化できるため、大幅な人件費の削減と省力化が実現します。 例えば、以下のような効果が期待できます。

  • 工場のラインで製品の検査を自動で行うことで、検査員の人数を減らせる
  • 店舗に来店した客の属性を自動で分析し、最適な接客やレイアウト変更を行える
  • 農作物の生育状況をAIが常時モニタリングし、熟練農家でなくても最適な管理が可能に

このように、画像解析の自動化により、人件費を大幅に抑えつつ、品質の安定化・向上も同時に図ることができるのです。

メリット②:客観的データに基づく意思決定

画像解析を導入すると、これまで人の目で見て判断していた内容を数値化し、客観的なデータとして蓄積できます。このデータを活用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 経験や勘に頼らず、データに基づいた意思決定が可能
  • 複数の選択肢の中から最適な判断を下せる
  • 意思決定の根拠を明確に説明できる

例えば、品質管理の場面では、製品の傷や汚れを定量的に評価し、合否判定の基準を設定できます。また、在庫管理においては、棚卸し作業を自動化し、在庫数量を正確に把握が可能です。さらに、マーケティングの分野では、店舗内の客動線や滞留時間を分析し、売り場レイアウトを最適化するといった活用方法が考えられます。

このように、画像解析によって得られた客観的なデータを意思決定に活用することで、業務の効率化や最適化を図ることができるのです。

メリット③:高速かつ継続的なモニタリング

画像解析のメリットとして、高速かつ継続的なモニタリングが可能になることが挙げられます。人の目による監視では見落としや集中力の低下などが起こりうるのに対し、画像解析システムは24時間365日休みなく監視を行うことができます。

工場の製造ラインでの不良品検知や交通量のリアルタイム把握、小売店舗での万引き防止などで威力を発揮するでしょう。

人手による監視に比べて、画像解析は長時間・高頻度のモニタリングが可能です。異常の兆候をいち早く捉えることで、迅速な対応が可能となるでしょう。

デメリット①:導入コストと専門知識の必要性

画像解析システムを導入する際には、以下のようなコストや専門知識が必要となります。

  • カメラやサーバーなどのハードウェア
  • 画像解析ソフトウェアのライセンス料
  • システム構築・運用・保守にかかる人件費
  • 画像解析のアルゴリズム開発や調整

特に画像解析のアルゴリズム開発には、機械学習や統計学などの専門知識が不可欠です。自社に知見がない場合は、外部の専門家に協力を仰ぐ必要があるでしょう。

デメリット②:精度向上までの時間と学習データの確保

画像解析の精度を高めるには、十分な量の学習データを用意し、モデルを適切に学習させる必要があります。そのため、導入当初は期待通りの性能が得られないことがあり、実用レベルに達するまでに一定の時間を要します。

学習データの確保においても、以下のような課題があります。

  • 対象とするシーンや物体の画像を大量に収集する必要がある
  • 画像に対して正解ラベルを付与する作業が発生する
  • シーンの変化に対応するため、継続的にデータを収集・追加する必要がある

以上のように、画像解析の精度を実用レベルに高めるまでには、相応の時間とコストが必要となります。導入の際はこの点を考慮し、長期的な視点で取り組む必要があるでしょう。

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本記事で紹介したように、画像解析はさまざまな分野で活用されていますが、その導入と運用には専門知識と高度な技術が必要となります。

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まとめ

画像解析は製造、流通、交通、医療など幅広い分野で活用されており、人数カウントや異常検知、作業の自動化などさまざまなことが可能です。導入により省力化やデータに基づく意思決定などのメリットが得られる一方、コストや専門知識、精度向上に時間を要するなどの課題も存在します。

画像解析の導入をご検討の際は、専門性の高いシルク・ラボラトリまでお気軽にご相談ください。